BASECORD 動画要約

「2008年の暴落を当てた私は、次に何が来るかを知っている」
— レイ・ダリオ 対談メモ

Ray Dalio × Steven Bartlett「The Diary Of A CEO」/約90分の対談を日本語で要約。世界最大のヘッジファンド ブリッジウォーター創業者による、AIバブル・借金・格差・世界秩序の話。
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大崩壊に備えよ レイ・ダリオ × スティーブン・バートレット

レイ・ダリオは1975年に2部屋のアパートでブリッジウォーターを創業し、世界最大のヘッジファンドに育てた。運用期間を通じて投資家にもたらした利益の累計はおよそ 530 億ドル、年率にしておよそ 12%。2008年の金融危機を事前に読み切った数少ない運用者の一人で、S&P500 が 4 割近く沈んだその年に 9.5% のプラスを出している。
その彼が、いま何を見ているか。話は「AIはバブルか」から始まり、最後は世界の力関係の組み替えにまで及ぶ。

1. いまはバブルか — 「典型的な兆候が出ている」

対談の口火を切ったのは、別の著名投資家ジェレミー・グランサムの言葉だった。「我々はAIバブルの真正面に立っている。データを見れば、天井が近いというのは歴史と整合する。これはアメリカ史上最大の投資バブルだと思う」。ダリオの答えは短い。「彼は正しい」。ただし彼は結論を急ぐことを嫌い、そこに至る因果を説明したがる。人生のこの段階で自分がやりたいのは、原因と結果のつながりを人に理解してもらうことだ、と彼は言う。

バブルとは、価格が大きく上がり、企業も実際に好調で、そしてある時点で崩れ落ちる現象を指す。1929年がそうであり、2000年のドットコムもそうだった。共通しているのは、本当に革命的な技術が登場していることである。1920年代後半は、家に初めて電気が通り、冷蔵庫と照明が入り、自動車が手の届くものになり、飛行機とラジオが現れた時代だった。人々は「これから素晴らしい未来が来る」と確信し、そしてその確信自体は正しかった。にもかかわらず大恐慌が起きた。技術が間違っていたのではない。値段を見なくなったことが問題だったのである。

いま我々はAIに強く興奮している。そして興奮するのは正しい。革命的な変化が起きるのだから。だがそこで人は、また同じように値段を見なくなる、というのがダリオの見立てである。

2. なぜ弾けるのか — 「富」と「お金」は別物である

ここでダリオが繰り返し強調するのが、富(wealth)とお金(money)は同じではないという一点だ。株を持っていて評価額が上がれば、その人は確かに裕福になる。だが富は使えない。使うためには売って現金に換えなければならない。使えるのはお金だけである。

番組の中で、司会のバートレットがこの仕組みを自分の言葉で言い直す場面がある。AI企業の株を1単位持っているとする。投資家の熱気でそれが 100 ドルと評価される。自分の純資産は 100 ドルになった。その紙の資産を担保に銀行へ行き、5割の 50 ドルを借りる。ところがどこかで何かが起きる——戦争でも、増税でも、金利上昇でもいい——投資家は他の借金を返すために現金が要る。皆が一斉に売りに出る。売ろうとした時、その株はもう 25 ドルにしかならない。だが銀行には 50 ドルの借金がある。慌てて売る。皆が売るから値はさらに下がる。人はレストランに行かなくなる。世の中のお金が減る。「その通りだ」とダリオは応じた。

上げ相場では、儲かった人ほど担保が増え、さらに借りられる。だから上昇は自己増幅する。そして下げ相場では、まったく同じ仕組みが逆回転する。誰かが支出を減らせば、それは別の誰かの収入が減るということだ。バブル後の景気後退はこうして起きる。

何が針を刺すのか

バブルそのものと、バブルを刺す針は別物だ、とダリオは分けて考える。刺すのはたいてい「富を売ってお金を作らなければならなくなる事情」である。典型は金利の上昇だ。過熱してインフレ圧力が出れば中央銀行は引き締めに動く。借金を抱えた人はより多くの現金を用意しなければならなくなり、同時に、債券の利回りが株式から得られる期待収益を上回っていく。富裕税のような制度もこの引き金になり得る。

もうひとつ、あまり語られない要因として彼が挙げるのが株式の供給である。需要ばかりが語られるが、供給側も動く。株ほど作るのが簡単なものはない。会社を持っていれば、株式は事実上「刷る」ことができる。市場が株を欲しがっている時、株は大量に生産される。実際に対談では、知り合いのAI経営者が「バブルだと思うから、今のうちに大金を調達しておく。市場が落ちて他社が苦しくなったら買い叩ける」と言って数億ドルを集めた話が出てくる。合理的な行動ではある。だがそれは同時にAI株の供給を増やす行為であり、バブルの終わりを早める側に働く。

バブルかどうかは白黒ではなく程度の問題だ、ともダリオは言い添える。彼が見る典型的な兆候のひとつは「誰が持っているか」である。知識のある強い手ではなく、詳しくない投資家が、しかも借金やレバレッジ型のETFを使って大量に入ってきているなら、それはもう投資ではなく丁半博打に近い。それがバブルのサインだ。

3. では個人はどうすればいいか — 「現金がいちばん安全」は間違い

備え方を問われたダリオは、まずタイミングを当てようとするなと釘を刺す。プロの投資家ですらバブルのタイミングを計るのは至難である。彼が繰り返す答えはひとつ、分散だ。

そして多くの人が誤解していることとして、彼は現金の話をする。銀行預金やMMFに置いておくのが最も安全だと人は考えるが、それは長期で見れば最悪の投資だという。理由はインフレである。いま物価は年に 3.5〜4% ほど上がっている。利息はだいたい同じくらいしか付かず、しかもその利息には税金がかかる。インフレに対して実質的には何も増えていないのに、税だけは払う。長い時間で見れば、これは確実に目減りしていく。

ではどこに置くか。彼が机の上に並べて見せるのは、株式、金、債券、自宅、そしてビットコインである。株式は生産性の向上を取り込める代わりに、下げる時は 60〜70% 落ちる。債券は政府にお金を貸す行為で、貸した後にインフレと金利が上がれば低い利率に縛られたままになる。自宅は住環境そのものであり、強制的な貯蓄になり、税制上も有利に扱われることが多い。これらが同時に悪くなる局面で、逆に強くなりやすいのが金だという。金は 1971 年までは通貨そのものであり、いまも二番目に大きな準備通貨として各国の中央銀行が保有している。他の資産と性質が違うからこそ、分散の道具として効く。

ビットコインについては、自分のポートフォリオのおよそ1%を持っていると明かした。刷ることのできないお金という点で金と同じ系統ではあるが、彼は金の方を好む。量子コンピュータのような技術に脅かされる可能性があり、政府に追跡され、課税され、望まれなければ手を出される余地がある。中央銀行がまとまった量を持つことはないだろう、取引を自分の管理下と秘密のうちに置きたいからだ、とも言う。ロシアの資産凍結を例に、金には「自分が握っていれば他人には取られない」という性質があると説明した。彼の推奨は、刷れないお金をポートフォリオの5〜15%、そのうえで自分は金を選ぶ、というものである。

ただし彼が「いちばん大事な問い」として挙げるのは、どの資産を買うかではない。収入が途絶えたとして、自分は何か月、何年生きられるか。若い頃、まだお金がなかった時代に彼が実際に数えていたのがこれだった。まずその安全の土台を確保し、そのうえで、70%下がりうるものに全額を置かないためにどう分散するか——これが彼の言う「見出し」である。

4. 資産を持たない人にとって、唯一の資産は自分自身

「30歳で資産もなく、自由に使えるお金が 100 ドルしかない人はどうすればいいのか」という質問に対する答えは率直だった。あなたの唯一の資産はあなた自身だ。自分をどう売って、より良い収入を得るか。それが主戦場になる。そして彼はごまかさずに続ける。AIや機械が人の仕事を置き換えていく中で、これは以前より難しくなっている、と。生産性が上がることは誰もが望むが、生産性はそのまま所得に直結するため、同時に格差を広げる。上位1割の才能に入れるなら世界は自分のものだが、そこに入るのは容易ではない。

この流れで司会が付け加えた指摘に、ダリオは全面的に同意している。同じ技能でも、置く場所が変われば値段はまるで違う。車を運転するという同じ能力でも、Uberの運転手として売るのと、要人の専属運転手として売るのとでは報酬が桁違いになる。いまの上司に昇給を頼めば、同僚や業界の相場と比べられて1割増えるかどうかで、段違いの変化は起きにくい。だから技能そのものより、その技能を高く評価する場所を探す方が効く。

ダリオはそこに、彼が「ほとんど万物の法則」と呼ぶものを重ねる。絵でも家具でも服でも人の時間でも、頂点にあるものは平均の何倍もの値段が付く。だから、時間と努力と技能をあと 10% 積み増して一段上に行けば、得られるものは 2 倍になる。そういう構造になっている、と。

5. AIは何を奪い、人には何が残るのか

ダリオは人類の歩みを、人体を下から順に置き換えていく過程として描く。農業の時代、人は畑で牛のような存在だった。やがて機械が発明され、トラクターが人の肉体労働を引き受けた。産業革命は工場で人の体がやっていたことを置き換えた。置き換えの線はそこから上へ上へと登ってきて、いまや思考と推論の、より高い階層に届きつつある

では誰が得をするのか。彼の答えは明快で、労働者を置き換えるアイデアを持った資本家である。企業の売上のうち労働者に渡る取り分は下がり続け、事業を所有する側に渡る取り分は上がり続けている。米国では成人のおよそ 61% が何らかの形で株を持っているが、その多くは年金経由の間接保有で、証券口座で個別株を直接持っているのは 20% にすぎない。しかも上位1割の世帯が株式のほぼ9割を握っている。雇用の話を抜きにしても、この一点だけで格差は広がる。

「新しい仕事が生まれるから大丈夫」というシリコンバレー発の物語について問われると、彼は語り手の立場を指摘したうえで、根本的な違いを述べた。これまでは、体が置き換えられても頭を使う仕事に移ればよかった。だが頭も体も両方置き換えられたとき、人は何を売ればいいのか

彼が残るものとして挙げるのは、感情と直感である。ロボットは良いマッサージができるのか、といった素朴な問いを彼は投げる。何が残るのかは、これから社会全体で格闘していく問題だ。ただし当面のことなら答えははっきりしている、とも言う。並外れた人間の知性を持ち、人工知能とパートナーとして組んで働ける人が、この先の最前線に立つ

雇用について彼が繰り返し念を押したのは、二つの力を混同するなということだった。ひとつはトラクターが労働者を置き換えるような、何十年もかけて連続的に進む技術的な置き換え。もうひとつはバブル崩壊による急激な失業の跳ね上がりである。失業率を大きく動かすのは後者だ。バブルが弾ければ企業は現金を必要とし、成長を諦めて生き残りのために人を切る。その上に、AIエージェントやロボットへの置き換えという遅い行進が重なる。Uberのダラ・コスロシャヒが「世界で9百万人いる配達員は、いずれ自動運転車と自律ロボットに置き換わる」と語った話も引かれるが、物理世界には規制も製造も必要なので、そこには時間がある。

6. ビッグサイクル — 80年で世界の秩序は組み替わる

ダリオの世界観の中心にあるのが「ビッグサイクル」である。彼は一枚の図で説明する。まず、技術の進歩を表す線が、右肩上がりにひたすら伸びていく。人は学んだことを忘れないので、この線は何が起きても上がり続ける。

その周りに二種類の波がある。小さい方は景気循環で、後退期に失業が増え、金融が緩められ、経済が回復し、繁栄になり、やがてバブルになる。設備が使い尽くされてインフレが上がり、引き締めが行われ、また後退へ戻る。この一周は平均でおよそ6年、前後3年ほどのぶれがある

大きい方の波がビッグサイクルで、こちらはおおよそ人の一生ぶん、平均して80年ほどで一周する。前回の起点は1945年だった。そこには通貨の秩序があり、国内政治の秩序があり、地政学の秩序がある。サイクルの終盤ではこれらの秩序が壊れる。借金が帳消しにされ、慣れ親しんだ通貨制度が終わり、国内の統治のかたちが変わることもある。国の体制はいつか必ず終わるものであり、それは激しい内部対立の中で起きることが多い。

そこに至る材料は三つある。債務——政府の借入余力は一生かけて積み上がり、やがて利払いが他のすべてを圧迫し始める。国内の格差と対立——資本主義は所得と資産の差を生み、それが教育機会の差になって次の世代へ受け継がれる。産業革命が金ぴか時代を生み、金ぴか時代が「泥棒男爵」への反発を生んだのと同じ道筋で、いまも高価なものを買い漁る風景と億万長者への反感が並んでいる。そして国と国との対立——支配的な力が一つある間は秩序が保たれるが、その力が揺らぐと、意見の相違はやがて衝突に変わる。

「いま我々はどこにいるのか」という問いに、ダリオは「下り坂の側にいる」と答えた。米国も英国も、他のいくつかの国も、サイクルの後半にいる。借金が過大で、力が失われつつある局面である。そしてこれは主観ではない、と彼は強調する。500年ぶんの各国の記録を調べたうえで、債務の水準も、教育の水準も、競争力も、すべて健康診断の数値のように客観的に測れるものだ、と。

7. 格差・教育・「底」をどこに置くか

格差の話をするとき、ダリオは自分が資本主義を愛していると前置きしたうえで現実を述べる。資本主義は必ず大きな差を生む。そしてその差は機会の差になる。裕福な家は子どもによい教育を与えられるからだ。

彼は自分の住むコネチカット州を例に挙げた。一人当たり所得では全米で二番目に豊かな州でありながら、高校生の 22% が中退しているか、欠席率25%超で落第状態にある。その先にあるのはギャング、銃、薬物、そして収監であり、州が収監に払う費用は教育予算を上回るまでになっている。多数派にとって機能しない仕組みは、いずれ必ず問題を起こす。

だから資本主義が必然的に不平等を生むわけではない、とも彼は言う。シンガポールや北欧のいくつかの国のように、誰もが良い教育と十分な住まいと医療を受けられる「底」を用意している社会はある。その底を割ると、その人たちは社会の資産ではなく負債になり、社会全体が高い代償を払う。

富裕税について

英国で議論になっている「純資産1千万ポンド超に2%の富裕税」という案(元番組ゲストのゲイリー・スティーブンソンの提案で、世論のおよそ7割が支持、税収は 200 億ドル規模と見積もられている)について、ダリオは賛成とも反対とも言わず、力学を説明した。

まず、税を払うために資産を売らなければならなくなる。これはまさにバブルを刺す針そのものである。次に、実務が難しい。値段の付けにくい資産をどう評価するのか。そして富の大半は投資に回っているものなので、課税は投資を減らす方向に働く。仮に最上層から100%取り上げたとしても、人数が少なすぎて必要な額には届かない。そして人は出ていく。出ていかせないために、歴史上何度も同じことが行われてきた——過去に遡って適用される法改正、資本規制、出国税。すべて前例がある。

彼の結論は、取るか取らないかではなく使い道にある。教育のように生産性を上げるものに向かうならよい。だが単なる移転支出、つまり消費に回るだけなら、投資に回るはずだった資金が消え、社会全体の生産性が落ちる。問うべきは「どうすれば人と社会を生産的にできるか」であり、そのうえで誰がそれを効率よく運営できるのかだ、と彼は言う。そして彼自身の観察では、政府は物事をうまく回すのが得意ではない。有能な人が集まりにくく、対立を生む構造を抱え、現場から遠いからである。

8. 英国という教訓、そして「賢いウサギは巣穴を三つ持つ」

「英国はいま何の教訓か」と問われて、ダリオは即答した。典型的なサイクルそのものだ。借金を負いすぎ、生産性が足りず、選択肢を使い果たしている。お金が足りないから内部の政治対立が燃え上がり、過去7年のうち6年で首相が変わった。誰かが約束を掲げて登場し、約束が果たされず、信用を失って追い出される。その繰り返しである。

逃げ道は塞がっている。増税すれば対立が激化し、人が出ていく。給付を削れば、いちばん苦しい人を直撃する。だが赤字は続いている。ならば誰が貸してくれるのか。「これは機構(メカニクス)の問題だ」と彼は言う。行き着く先は大がかりな再編である。いまの中央銀行のやり方は、お金を刷ってインフレを起こすことと、債務の再編(たとえば満期を延ばす)を混ぜ合わせることだ。そしてこうした局面ではしばしば資本規制が導入される。人が資金を持って出ていくのを止めるためである。

ではどうすればよいのか。彼が挙げた処方は「強い真ん中」だった。左右が極端に振れて互いに戦っている限り、事態は悪くなるだけだ。両党の、経済を本当に理解している人間による超党派の委員会を作り、小さくても実行可能で、痛みを分かち合う難しい計画をまとめる。憲法もそうやって作られた、と彼は言う。そして正直に付け加える。これは非常に難しく、可能性は低い。歴史のパターンから言えば、話し合いがまとまるより大喧嘩になる方が起こりやすい。

「21歳の起業家なら、いま英国で会社を作るか」という質問への答えは、国名ではなかった。国境なしに存在せよ。世界には活気と資本と必要な条件が揃った「ルネサンス国家」と呼びたくなる場所がある。教育があり、礼節があり、生産性がある場所だ。そこにいろ。ただし一か所に固執するな。香港の言い回しに「賢いウサギは巣穴を三つ持つ」というものがある。いま最良の場所が、これからも最良である保証はない。英国については、全体としては難しい場所になりつつあるが、その中にも良く機能している一角はある——ただしそれは、健全とは言えない仕組みの内側にある一角だ、というのが彼の見方だった。

9. 世界秩序の組み替え — 覇権から地域へ

過去500年、秩序が崩れて新しい世界秩序が生まれるとき、覇権はたいてい一つだった。第一次大戦より前は世界が地域に分かれていて、強い中国やインドと、強い英国やオランダが同時に存在し得た。世界がひとつになってからは、意見の相違をどう解決するかという問題が残る。ルールに基づく秩序というのは第二次大戦後のアメリカが描いた理論的な構想であり、それが力と食い違ったとき、勝つのは力の方だ。だから本来は一つの支配的な力に収束する。

だがダリオは、今回はそうならない可能性が高いと見る。最も望ましい着地は「より地域的になること」だという。中国には他国を占領して支配する意図はなく、文化的にもそうした発想は薄い。彼らの基本的な目的は、切り離されないこと、害されないこと、そして自分たちのやり方——儒教の延長にある家族的で上意下達な体制——の中で可能な限り強くあることだ。アメリカ大陸を中心とする圏と、中国を中心とするアジア太平洋圏。それぞれの圏の中で発展が進む形になり、破滅的な大戦争は避けられるだろう、と彼は考えている。台湾についても、軍事的な激突ではなく、圧力を積み重ねた末の統一という形になる可能性が高いと述べた。

そして各国の強さを決めるのは、外に向けた力ではなく自分自身の手入れだと彼は繰り返す。国民をどう教育し、お金をどう使い、自分たちをどう治めるか。それが米中の相対的な力を決める。アメリカが力を失うとしたら、それは外からではなく、債務と内部対立という内側からの侵食によってである。

イラン、ホルムズ海峡、そして「見えてしまった弱さ」

米国とイランの戦争について、ダリオは自分がアジアの指導者たちと話して感じていることを語った。アメリカは戦争をしたくない、と各国が認識し始めている。国内世論はガソリン価格を心配し、犠牲者を嫌い、早く終わってほしいと願っている。その状態で戦争は戦えない。9千万人のイラン人はそこに居続けるのだから、外から入って長期に支配することはできない。ホルムズ海峡を自分の手に置きたいなら、大きな痛みを払い、しかもそれを未来永劫続けなければならない。同じことをアジアでも、他の場所でも続けられるのか。それはつまり、世界秩序の変化そのものだ

この件を「大きな間違いだった」と彼ははっきり言った。そして最も大きな代償は、弱さに光を当ててしまったことだという。かつてアメリカは、望むことをほのめかすだけで相手国が動くだけの力を持っていた。軍事力だけでなく経済力の裏付けがあったからだ。だがいまや中国の方が、多くの国にとって大きな貿易相手になっている。そして台湾からの半導体が止まればどうなるかを想像すれば、軍事力によらない力の存在も分かる。中国が「5日間止める」と言えるというだけで、世界の株式市場は崩れる。フィリピンのように米国と条約を結ぶ国を守るために空母を送ることを、アメリカの世論が支持するだろうか。かつての英国とスエズ運河のように、それまで見えなかったものが、ある日はっきり見えてしまったのである。「脅しはもう効かない」と司会が確認すると、ダリオはこう言い直した。その力がもう存在しないのだ、と。

10. 16歳の子どもに何を言うか

「もし16歳の子に『何をすればいい』と聞かれたら」という問いに、ダリオはまず哲学的なところから入った。最も高い収入が最良だと決めてかからないでほしい。基本的な水準を超えたところでは、お金の額と幸福度の間にほとんど相関はない。自分は自然の中にいるのが好きだが、それにはほとんどお金がかからない。パニックにならずに済む水準を超えること、そのうえで自分が本当に送りたい生活があること。彼の原則は「仕事と情熱を同じものにせよ。ただしお金のことも忘れるな」である。

次に彼が言うのは自分の性質(nature)を知れということだ。これは好き嫌いの話ではない。冒険的な人とそうでない人、概念的・芸術的に想像で考えるのが好きな人と、具体的で確実な世界を望む人。生まれ持った部分と、幼い時期に形づくられた部分がある。人生とは、自分の性質と自分の道の一致を探す旅であり、そのために彼は自分が作った性格診断をPrinciples U として無料で公開している(30分ほど)。

そして、職業を名指しすることを彼は明確に拒んだ。弁護士になりたいと言われたらどうするか、という問いへの答えがこれである。

歴史が示してきたのは、最も成功するのは最も知能の高い者でも、最も懸命に働く者でもなく、最も適応できる者だということだ。もちろん知能も努力も非常に重要ではあるけれども。

少し前まで、我々は今のような人工知能が存在するとすら思っていなかった。かつては「コードが書けるようにしておけ」が答えだった。そこへ Claude Code のようなものが現れ、コードを書いていた人たちが自分の仕事を心配し始めている。未来はこれからもそういうものだ。だから未来が分からないという事実を、まず受け入れてしまえと彼は言う。そのうえで必要なのは、AIのような道具を最大限に使いこなして自分の知りうる範囲を広げること、そしてそれを使って、自分を満たしてくれる仕事の中で、可能な限り役に立つ存在になることだ。「コンピュータプログラマーになるべきか、それとも別の何かか」と答えを探すのは、むしろその子を惑わせることになる——それが、彼が自分の孫たちに言っていることだった。

この対談を一行でまとめると

いま起きていることはどれも初めてではない。債務と格差と覇権の三つが同時に軋む局面を、歴史は80年ごとに繰り返してきた。
だから重要なのは予測を当てることではなく、何が起きても壊れない側に自分を置いておくことである。

お金では、当てにいかずに分散する。刷れないお金を1〜2割ほど持つ。収入が止まっても何年生きられるかを数えておく。
仕事では、職業名で未来を決めない。自分の性質に合う道を探し、道具を使いこなし、適応し続ける。

出典:https://youtu.be/Bu0xNDLNORU(The Diary Of A CEO/約90分)
※ YouTube の自動生成英語字幕(全文・約9.7万字)から日本語に要約。字幕には一部聞き取り誤りがあるため、数値・固有名詞は対談での言及に基づく概数です。
※ 番組内のスポンサー告知・チャンネル登録の呼びかけは要約から除いています。
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